HK MP5の民間モデル:SP5
H&Kが近年人気のARピストルカテゴリに往年の名銃を導入
1960年代に登場し、60年近くが経過した現在でも史上最高のサブマシンガンとして認識され続けているHK(Heckler&Koch:ヘッケラー&コッホ)のMP5。発射機能の違いの他、ストックやハンドガードの構成別に様々なモデルが存在するが、民間モデルは1980年代から1990年代にかけて存在した2モデルのみであり、長らく軍や法執行機関以外では使用できないサブマシンガンとして存在していた。
しかし、近年人気を博しているARピストルの市場が拡大していることを受けてか、H&KはMP5の民間バージョンとも言えるSP5を2019年末に発表、SHOT SHOW 2020でもRange DayやHKブースに登場し話題を集めている。
HK SP5は民間市場でピストルとして販売できるようMP5K(クルツ)のようにストックレスとなっている他、当然フルオート機能もオミットされているが、それらの点以外はまさにMP5そのものだ(SHOT SHOW 2020のRange Dayでは許可を取得しているのかストック付きバージョンが試射されている)。レシーバーエンドはクルツと同じピン止めのため、アームブレースなどを取り付けることで安定した射撃を行うこともできるようになっている。
SP5の製造はドイツのH&Kオーベルンドルフ工場で製造され、H&K USAによってアメリカ国内に輸入される。MP5同様に
ローラーディレイドブローバック方式が採用されるため、専門のスタッフによって製造を行っているあたり、民間仕様とはいえ動作性能や射撃精度にはかなり期待できるモデルと言えそうだ。
民間仕様のMP5の歴史
HK MP5には今まで民間仕様がなかった訳ではない。1980年代に登場した16.5インチ仕様のHK94は規制に合わせたロングバレルが不評で、バレルジャケットを使用してSDシリーズの様に見せたり、ATFにSBRとして申請してバレルカットを行うなどの方法が行われたが、1988年には民間向けの販売を終えている。
その翌年にはSP89としてMP5Kからフォアグリップが排除された民間モデルも登場したが、1994年に制定されたAWB(Assault Weapons Ban:連邦攻撃武器規制)のためかこちらも1993年には販売を終えた。AWBは10年間の有効期限付き規制であったため、2004年には失効している。SP89は最近になってHK SP5Kとして名称を変え再度販売を開始している。
上記のように限られた民間モデルが存在していたMP5であったが、そのどちらもMP5ファンを納得させるようなモデルとして市場を席捲したわけではなかった。MP5は登場以来ほんとんどそのデザインを変えていないが、オリジナルのMP5の姿をほぼそのまま民間仕様にしたモデルが登場したのは今回が初めてのことである。
近年、ピストルカテゴリとして扱われるARピストルなどの銃器に人気が集まる動向をH&Kでも認識してのことか、往年のデザインをそのままに民間仕様のMP5が登場したことは大きな話題となっている。非常に高性能なサブマシンガンのピストルカテゴリへの参入が、銃愛好家やアフターパーツマーケットにどこまで影響を与えていくか今後に注目していきたい。